一年前に考えた前タイトル「ヒッチハイク!!!」は松尾芭蕉を主人公にしたチャンバラ公演の予定だった。

「旅から旅へのヒッチハイク(俳句)生活!」というコンセプトに当時の私の脳は大いにはしゃいだが、
「10周年なのに松尾芭蕉ってシブすぎないか・・・・」という考えが頭をもたげ始め、
「俳句なんて作ったことないよ・・・・」という怯えがわき上がり、
「10周年なのに自分たちのことを書かないっておかしくないか?」という想いに至った。
これを心変わりというか、心の成長というかはご想像にお任せするが、一年前というのは、ちょうど大阪から東京に劇団ごと引っ越した頃で、そこから僕らを取り巻く環境はガラリとかわり、心境も変化した。

僕の好奇心は劇団が直面している新鮮な「今」に吸い寄せられていったのだ。
僕はどうしても「今」を書きたくなった。
10周年を経て、これから新しく始めるために、今の僕らの姿を作品にとどめたかった。
だから、迷惑を承知でタイトルを変更して、内容を再び練り直すことにした。

新しいタイトルは「重力の光」。
僕らの生活には重力が必要で、宇宙空間では受精卵が育たなかったりする。
物理学が神話であった頃、重力は「愛」という言葉で説明されていた。
この物語の主人公・光は、「祖父の臨終に現れた天使を、悲しみに狂った父親が犯して」生まれた。
天使に重力は関係ない。光に質量はない。
けれど、愛のない日々に、神も天使も人間もきっと耐えられない。

代表 益山貴司